教育実践の記
小学校における国語科の授業や学級づくりの記録等
足立 馨
子どもたちに、朝の会や帰りの会で自分自身の体験談を話すことがある。どちらかというと苦い話が多いが、子どもたちはよく聞いてくれる。大上段に構えて説教をするより子どもの心に入っていく気がする。
受け持ちの4年生に次のような話をしたことがある。
先生が小学校5年生の時でした。その頃、「ミニカー」という小さな車のおもちゃがとても流行していました。いろんな種類のミニカーを友だち同士でよく見せ合っていたものでした。でも、先生はミニカーを買うこづかいを持っていなくて、友だちのものを貸してもらって遊んでいました。
ある日、友だちの家に遊びに行ったら、たまたま先生の好きなミニカーがその家にありました。そのミニカーと遊んでいるうちに、どうしてもそれがほしくなりました。それで、「悪い」とはわかっていたのですが、友だちがつい目をはなした隙に、先生はそのミニカーを自分のポケットに入れてしまったのです。そして、何事もなかったかのように、友だちに「バイバイ。」と言って自分の家に帰りました。それから、一人でミニカーで遊びました。ほしくてたまらなかったミニカーです。でも、遊んでいてもちっとも楽しくはありませんでした。それよりも、何か落ち着かなくてイライラした気持ちの方が大きくなりました。「しまったあ。」と思う気持ちが強くなってきました。
結局、ミニカーは次の日、友だちの家に行って気づかれないようにもどしました。「あの時、何で悪いと思っていながら、弱い心に打ち勝つことができなかったんだろう。」と情けない気持ちになりました。その気持ちは30年以上たった今でも心のすみに残っています。
みなさんには、どうか弱い心に打ち勝つ強い心をもってほしいと願っています。
教師が、自分自身の体験にもとづいたメッセージを子どもに伝えていくことが大切だと考える。生の話が子どもの心にしみていくのだと考える。